
フィリピンには、日本で一般的に行われている「離婚」という制度が存在しません。
では、もしも結婚生活がうまくいかない場合、どのように婚姻関係を解消するのでしょうか?
その答えが「アナルメント(Annulment)」という制度です。
この記事では、フィリピンのアナルメント制度について、基本的な特徴や手続き方法、必要な費用などをわかりやすく解説します。
このページの目次
「アナルメント制度」とは
フィリピンは、結婚に対する考え方が非常に厳格で、キリスト教、特にカトリック教徒が多くを占める国です。
そのため、結婚は一生続くべき神聖なものとして扱われ、離婚という概念は存在しません。
このため、もしも結婚生活に問題が生じた場合、結婚そのものを「無効」にする手続きが必要になります。
それが、「アナルメント」という制度です。
1. フィリピンの結婚制度とその背景

フィリピンでは、結婚は終わりのないものと考えられています。
これはカトリック教会の教義に深く根ざしており、「結婚は神と人々の前で結ばれる神聖な絆であり、死ぬまで解消されるべきではない」とされています。
そのため、離婚を認めないフィリピンでは、結婚に何らかの問題があった場合、婚姻そのものを解消する「アナルメント」を申請することが必要となります。
2. アナルメント(Annulment)とは?
アナルメントとは、結婚そのものを無効とする手続きです。
通常の離婚とは異なり、アナルメントでは「最初から結婚が存在しなかった」という判断が下されます。つまり、結婚が成立するための基本的な条件が欠けていたと認定された場合、その婚姻関係は取り消され、結婚前の状態に戻ることができます。
アナルメントの申請が認められる条件には、いくつかの理由があります。
例えば以下のようなものです。
- 精神的な障害がある人との結婚
- 身体的な理由で婚姻生活を維持できない人との結婚
- 性病を持っていたことが理由で結婚を申し込まれた場合
- 詐欺や強迫で結婚を強要された場合
これらの理由に該当する場合、アナルメントを申請することで、婚姻関係を法的に無効にすることができます。
3. ディクラレイト(Declare)とは?
アナルメントとは異なり、ディクラレイト(婚姻の無効)は、最初から結婚が成立する条件が整っていなかった場合に適用される手続きです。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
- 未成年者同士の婚姻
- 近親婚(親戚同士で結婚した場合)
- 重婚(複数の配偶者を持つこと)
- 結婚許可を受けていない状態での婚姻
- 結婚式の進行を担当するべき役人がいなかった場合
これらのケースでは、婚姻自体が無効とされ、その婚姻は法律上存在しなかったことになります。
4. アナルメントの手続きと費用

アナルメントの手続きは、裁判所で行われます。
申し立てを行った後、裁判所が結婚が無効であるかどうかを審理し、最終的に判断が下されます。
この手続きは一般的に時間がかかり、費用も高額です。
アナルメントの申請にかかる費用は、最低でも30万ペソ(約60万円〜75万円)程度になるとされています。
フィリピンの平均年収が約23万ペソ(約46万円)であることを考えると、この費用は非常に高額であり、アナルメントを実行するには相当な経済的負担を伴うことがわかります。そのため、多くのフィリピン人にとってアナルメントは簡単に利用できる制度ではなく、特別な事情がない限り、手続きに踏み切ることは難しいとされています。
また、アナルメントの申請には弁護士を依頼する必要があり、その弁護士費用もかなり高額です。
弁護士によっては、法外な料金を請求する場合もあるため、慎重に選ぶことが重要です。
5. リコグニッション(Recognition)について
フィリピンの「リコグニッション」は、海外で成立した離婚をフィリピン国内で承認する手続きです。
例えば、フィリピン人と外国人が結婚し、その後外国で離婚をした場合、その離婚がフィリピンで認められるためにリコグニッションを行います。
リコグニッションを通じて、フィリピン国内でも合法的に離婚が成立したことが確認されます。
まとめ
フィリピンには、私たちが知っている「離婚」という制度が存在せず、代わりに「アナルメント」という婚姻解消の手続きがあります。
この制度は、結婚そのものを無効とするもので、詐欺や強迫、身体的・精神的な理由など、特定の条件が満たされると適用されます。
しかし、アナルメントには高額な費用がかかるため、フィリピン人にとっては非常に大きな負担となります。
また、フィリピン国内で行った婚姻を無効にするための「ディクラレイト」や、外国で行った離婚を認める「リコグニッション」など、婚姻に関する手続きは多岐にわたります。
これらの制度は、フィリピンの厳格な結婚観や宗教的背景に基づいており、結婚を非常に神聖視する文化が影響しています。
フィリピンでの婚姻や婚姻解消を考える場合、これらの制度をしっかりと理解し、慎重に対応することが求められます。
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