日本人が英語が苦手な理由に迫る!

先日「所さんのニッポンの出番」という番組の中で、「日本人が英語が苦手な理由とは? その意外な真実に迫る! そこには誰もが知っているあの偉人が深く関わっていた!」と題して日本人はなぜ英語が苦手なのか? という難題が取り上げられていましたので、その概要についてご紹介したいと思います。

 

 

日本人の英語の実力は?

2013年国際成人力調査(PIAAC)というものの中で、「読解力」及び「数的思考力」については、日本人が世界第1位だったそうです。(経済協力開発機構調べ)

 

ところが英語能力判定テストTOEFL(iBT)では、下のデータの通りアジアの中だけで見ても最下位レベルという何ともお粗末な結果だったという事が分かります。

TOEFLスコア

出典:Test and Score Data Summary for TOEFL iBT Test 2016 (ETS)

 

日本中に変な英語があふれている???

意味不明の看板

*上の写真で"clash"は「けんか、戦闘」、正しくは"crash"

 

日本ではどんな田舎へ行っても、町の看板や歌詞などにもたくさんの英語が使われていますが、外国人から見ると、非常におかしな英語がたくさんあるようです。

 

例えば、「CAN YOU CELEBRATE?」という結婚式でもよく使われている曲がありますが、これを日本語に訳すと、「どんちゃん騒ぎしようぜ!」といった意味になるそうです。

 

その他にも日本には外国人を混乱させてしまう意味不明な英語があふれているそうです。

 

例としていくつか挙げると、

 

HIGH TENSION PLEASE!!」(街中の看板) → 「高電圧下さい!

 

Please rock the door.」(ホテルのフロント) → 「扉を激しくぶち破って下さい

 

日本での英語教育

日本には数多くの英会話教室(全国で約10,000校ほど)があり、これほど熱心に英語を勉強している国はありません! それなのに日本の現状は・・・。

 

東京オリンピックも決まり、政府は2020年度から小学校での英語学習の開始時期を現行の5年生から3年生に前倒しするとともに、中学校での英語の授業を全て英語で行うことを発表しています。

 

【番組出演者(外国人)のコメント】

 

日本に初めて来たとき、日本人に「Do you understand English?」と聞いたら「No!」と返事されたのだが、私の言った英語をちゃんと理解して返事をしているにもかかわらず、なぜ「No」なのか???

NGサインをする女性

 

日本人は英語が話せないのではなくて、話さないのではないか?

 

日本人は英語を話そうとする時、完璧に話せないと話さない!

 

私たちの場合は50%しか出来なくても話しながら覚えていく。

 

その違いではないか?

 

周りに日本人がいると話さないが、いないと話す。

 

お酒が入ると話す。

 

スイスではフランス語の授業に入った瞬間からフランス語に変わる。

 

フランス語が全く分からない状態からフランス語の授業がフランス語でスタートする。

 

最初はほとんど分からないが、少しずつ慣れて分かるようになってくる。

 

日本の場合は、英語のテキストを見たり読んだりする時だけ英語になるが、それ以外は全て日本語。

 

日本人が英語を苦手とする主な理由についての検証

理由その1)発音

 

日本人は英語の発音、特に「LとR」が出来ないと言われている。

 

Rのように舌先を丸めるような発音は日本語にはないからだ。

 

ところがエジプト出身の力士は、母国語のアラビア語は母音が3つだけとのこと。

 

日本語と同様に英語の発音とは大きく異なるが、彼はそれを見事に克服している。

 

彼曰く、とにかく練習すること!

 

→ つまり、発音に対する問題はトレーニングによって解決できるということ!

 

理由その2)文法の違い

 

英語の語順は「主語・動詞・目的語」の順であるのに対し、日本語は「主語・目的語・動詞」の順。

 

例えば、I want to buy a red umbrella. を英語の語順のまま日本語に訳すと、「私は、ほしいです。赤い傘が」となります。

 

しかし、語順の違いについて分析している教授によると、韓国語は日本語の語順と同じだが、特に近年では韓国人の英語力はかなり高くなってきている。

 

→ つまり、文法の違いもトレーニングで克服できると結論付けています。

 

理由その3)英語教育のスタートが遅い

 

日本では英語教育のスタートは2014年度においては、小学5年生であるが、韓国や中国も含め諸外国ではもっと早い時期から英語を教えている。

 

脳科学の研究では、外国語学習に最適な時期は3歳~9歳と言われ、日本での英語教育のスタート時期が遅いということで問題にされていましたが、前述の教授によると、早い時期から英語教育をスタートさせた子供と中学生からスタートさせた子供を比較しても差がないという統計が出ているらしいのです。

 

それよりも母語である日本語をしっかり学んだほうが、将来的には英語力が伸びやすいとのこと。

 

→ つまり、日本人の英語教育のスタート時期が遅いことは、日本人が英語が苦手な理由にはならないとのことです。

 

仮説 → 日本人は心底から英語が嫌い???

かつて日本人は、英語を話す国のことを「鬼畜米英」と呼んでいたそうです。

 

* 鬼畜米英(きちくべいえい):太平洋戦争時の大日本帝国で当時の交戦国であった米英(アメリカ合衆国、イギリス)が、鬼・畜生を意味する「鬼畜」に値すると言う意味で使われた言葉。

 

そして、その当時あらゆる英語を日本語に置き換えたという事です。

 

例えば、

 

カレーライス → 辛味入汁掛飯(からみいりしるかけめし)

 

サクソフォーン → 金属製曲がり尺八

 

ストライク・バッターアウト → よしっ!みっつ!それまで!

 

また、第二次世界大戦に敗れた悔しさから英語嫌いになったのでは・・・

 

しかし、その仮説は「日米会話手帳」なるもので崩れました。

 

これは、戦後約3か月で360万部も売れたベストセラー

 

本当に英語が嫌いなら、戦後の数年前まで鬼畜とまで呼んだ国のことを学ぼうとは思わないでしょう。

 

英語力でその名をのこした日本の偉人たち

白洲次郎

白洲次郎 (吉田茂首相の側近として政治の中核で活躍)

 

彼は日本一カッコイイ男と呼ばれ国民的人気を得た人物。

 

その最大の理由は、占領軍最高司令官ダグラス・マッカーサーに対して一歩も引かず渡り合うことが出来た英語力にあったといわれているそうです。

伊藤博文

伊藤博文 (初代内閣総理大臣)

 

英語力で人生を切り開いた一人。

 

彼はもともと身分は低かったが、イギリス留学でいち早く英会話を身につけ、後に使節団に加わり、誰よりも堂々と外国人と会話できたとの事。

 

それが初代内閣総理大臣に上り詰めた大きなきっかけになったと言われているそうです。

 

英語は明治時代の日本人にとってどんな存在であったか?

それを明確に今に伝える証拠が残っている。

 

日本近代文学の元祖、小説家 坪内逍遥の作品で、明治10年頃の学生たちの会話を描いた小説「当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)」というものだ。

 

この中で描かれる逍遥が見た実際の学生たちの日常会話は驚くべきもので、「我輩のウォッチでは、まだテンミニッツ位あるから、急いていきよったら、大丈夫ぢゃらう。」といったような英語混じりの何とも珍妙な日本語です。

 

しかし、当時はこれが最先端の流行、明治の日本は英語ブームに沸いていたそうです。

 

ではなぜ日本人は英語が苦手なのか???

その答えは意外な場所、東南アジアにありました。

 

その東南アジアと日本の大きな違いとは?

 

1)フィリピンの場合

フィリピンの子供達

 

小学校1年生の算数の授業風景を見てみると、授業は全て英語で行われている。

 

フィリピンでは、算数・理科・パソコンも英語で教えるのが普通らしい。

 

算数の教科書の中身を見てみると、日本の中学校レベルの英語力がないと理解出来ない。

 

なぜ母国語で教えずに算数や理科を英語で教えるのというと、そもそもフィリピンの言葉に存在しない単語があるからだそうだ。

 

例えば、光合成 → Photosynthesis染色体 → Chromosome などがこれにあたる。

 

そのため、専門用語の説明には英語で教育したほうが都合が良いのだそうだ。

 

また、書店に並ぶ本も英語のものがほとんどで、英語が出来ないと就職時のハンディにもなる。

 

これらが、フィリピンの英語力が高い理由である。

 

2)マレーシアの場合

 

大学の物理は英語で学んでいるとの事。

 

書店の8割の本が英語。

 

3)インドの場合

 

多民族国家のため、地域によって使用される言葉があまりにも違っており、英語が共通言語の役割まで担っているとの事。

 

日本の場合はどうか?

日本の学校教育

 

書店では日本語で書かれた高度な学術書が当たり前のように売られていて、大学生も日本語で講義を受けることに何の疑問も感じていない。

 

日本では、勉強もコミュニケーションも母国語である日本語だけで事足りるのである。

 

このことは、アジアでは極めて珍しいことであるようだ。

 

なぜこのような状況が生まれたのか?

 

東京大学の前身である開成学校の明治6年当時の時間割を見てみると、毎日、最後の授業として「翻譯(翻訳)」が設けられていた。

 

これはいったいどんな授業なのか?

 

明治時代の言語学の専門家によると、日本ではアメリカ、イギリス、フランスなどと条約を結んだが、その条約が平等ではなかった。

 

そこで、明治時代のお役人たちが何とか平等にしようとした。

 

そのためには日本が近代化する、ようするに西洋化して同じようにしたい。

 

その知識を得るためには、どうしても翻訳をして多くのものを日本に入れなければならなかった。

 

その当時西洋の知識を得るには外国人に頼らざるをえなかった。

 

そこで日本政府は多くの学校を作り、多くの外国人教師を雇い、もちろん授業は全て外国語、教科書も洋書、今のフィリピンの小学生と同じく明治の学生はあらゆる知識を外国語で学んだのそうだ。

 

しかし、西洋に追いつき追い越そうと考えた明治の日本人は、こんな状態に満足しなかった。

 

西洋の知識をより広く普及させるには、日本人の指導者を育成しなければならない、そのために設けられたのが、前述の翻訳の時間だったわけです。

 

しかし、翻訳といっても簡単なことではなかった。

 

西洋の言葉の中には、当時の日本語には存在しないイメージすることさえ難しい言葉が山のように存在したからだ。

 

その当時、辞書はすでにいくつかあったが、そこに載せられた日本語はまだまだ未熟、そのまま使える状態ではなかった。

 

そこで、漢字に意味を加えたり中国の古典から探したり、時には造語をして新しい言葉をひとつひとつ作り出したのだそうです。

 

そんな明治の新しい言葉作りのチャンピオンと言えるのが、福沢諭吉である。

 

彼は、いち早く西洋文明を学びさまざまな翻訳をしたことで知られているが、その中には、今も日本人が使い続けているものも少なくない。

 

そんな福沢諭吉が悩みに悩んだ言葉が、「自由」

 

彼は、「freedom」と「liberty」の訳を「自由」としたが、これを「わがまま」や「自分勝手」の意味にとらえられたくなかった。

 

そのため、もう一つの言葉と最後まで迷ったそうです。

 

それが、「御免」

 

もし、福沢諭吉が「御免」のほうを選んでいたら、「自由の女神」は、「御免の女神」となっていたことになる。

 

福沢諭吉をはじめ、明治の知識人が作った新たな日本語は、西洋の文化と日本をつなぎ、それらが、もともと西洋由来の言葉とは思わないほどの日本人の言葉として定着した。

 

この技術こそが、日本と他のアジアの国との大きな違いである。

 

現代の日本人は明治の人々が残してくれた遺産を無意識に使いながら、勉強し生きている。

 

日本以外のアジアの国では英語が出来る人しか高等教育を受けられない。

 

日本では全ての国民がみな平等に大学へ行き、日本語だけで世界で一番高いレベルの教育を受けることが出来る。

 

例えば、2008年ノーベル物理学賞を受賞した益川教授は、その記念講演でこう言った。

 

「I'm sorry, I can't speak English.」 これには世界のメディアが驚いた。

 

つまり、英語が出来なくても高度な物理学を日本語だけで学ぶ事が出来るのだ。

 

日本人が英語が苦手な理由に対する結論

なぜ日本人は英語が苦手なのか?

悩む女性

 

それは、明治のエリートたちが作った言葉の防波堤にこの国の人々が今も守られ続けているからではないでしょうか?

 

大学レベルの知識まで自分の国の言葉で学べる国は、世界にそれほど多くはありません。

 

つまりこれが結論です。→ この国で生きる日本人に英語は必要ない!

 

ですが、未来はどうでしょう?

 

今こそ日本の出番ではないでしょうか?

 

 

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